責任ある調達 · 調達ガイド

合金鋼棒の調達で読む、炭素フットプリント・EPD・材料トレーサビリティ

鋼材の排出量を比較するときは、まず数値がどの製品を指すのかを確認します。粗鋼1トンと、焼入れ・焼戻しを終えた鋼棒1トンでは、含まれる工程が違います。鋼種、納入状態、必要な性能をそろえてから、環境データを読み比べることが大切です。

「グリーンスチール」は何を表すのか

ここでいう低炭素は、製造に伴う温室効果ガスの排出量を指します。鋼の炭素含有量が少ない「低炭素鋼」とは別の概念です。IEAは、排出削減が進んだ生産と、ほぼゼロ排出の基準を満たす生産を区別しています。基準を読む際には、スクラップ比率と算定範囲も確認します。

スクラップ比率と鋼材の排出基準。2024年に整理された基準案の比較です。赤い参照線はスクラップを使わない仮想的な高炉・転炉ルートを表します。IEA、2024年、19ページ。
スクラップ比率と鋼材の排出基準。2024年に整理された基準案の比較です。赤い参照線はスクラップを使わない仮想的な高炉・転炉ルートを表します。IEA、2024年、19ページ。 IEA. © IEA、CC BY 4.0。報告書からトリミングし、図と原注は英語のまま保持しています。画像を開くと拡大できます。 CC BY 4.0

参考資料: IEA · 2024

1トン当たりの排出量を読む

よく使われる単位は、製品1トン当たりのt CO₂eです。CO₂eは、対象となる温室効果ガスを二酸化炭素相当量に換算したものです。800 kg CO₂e/tは0.80 t CO₂e/tと同じで、0.80 kg CO₂e/kgも同じ値になります。製品・算定範囲・方法が比較できる条件なら、1.20 t CO₂e/tは1.60より25%低い値です。worldsteelが公表した2024年の業界平均は、その集計範囲で2.18 t CO₂e/tです。個々の鋼棒の排出量を示す数値ではありません。

参考資料: worldsteel · 2024

ミルシート、EPD、炭素フットプリントの違い

ミルシートは材料の識別情報や所定の試験結果を示します。環境製品宣言(EPD)はライフサイクルアセスメントに基づく検証済みの環境情報を掲載し、複数の環境影響を扱います。製品の炭素フットプリントは温室効果ガスに対象を絞っています。

資料分かること確認する項目
ミルシート(MTC)材料の識別情報、化学成分、所定の試験結果。鋼種、溶鋼番号・ロット、EN 10204の書類区分、現物の表示。
EPDライフサイクル評価に基づく検証済みの環境情報。対象製品、宣言単位、モジュール、製品カテゴリールール、有効期間、検証。
製品の炭素フットプリント定義した製品システムの温室効果ガス。ISO 14067などに基づく算定。算定範囲、期間、データ、独立した検証の有無と対象範囲。
ResponsibleSteel所定の認証制度に基づく適合情報。事業所認証とCertified Steelを区別し、認証範囲を確認。

参考資料: BS EN 10204:2004 · ISO 14067:2018 · EPD Australasia · ResponsibleSteel

どこまでの加工が含まれているか

圧延、焼入れ・焼戻し、ピーリング、研削、輸送のうち、どの工程が数値に含まれるかを確認します。単位、工場、データの対象期間、電力の前提も比較のポイントです。EPD同士では製品カテゴリールール、機能、技術性能、評価方法をそろえます。将来のリサイクルによる便益は、製造時の環境負荷と分けて読みます。

鋼棒の加工

排出量の測定、データ収集、検証、調達時の表示を結ぶ枠組み。IEA、2023年、図1、12ページ。
排出量の測定、データ収集、検証、調達時の表示を結ぶ枠組み。IEA、2023年、図1、12ページ。 IEA. © IEA、CC BY 4.0。報告書からトリミングし、図と原注は英語のまま保持しています。画像を開くと拡大できます。 CC BY 4.0

参考資料: IEA · 2023 · International EPD System

納入先と用途によって変わる資料

オーストラリアでは、EPD AustralasiaのデータベースやGreen Starが建築案件の資料確認に使われます。カナダの連邦政府のエンボディドカーボン基準は、対象となる建設案件と製品を定めています。EUのCBAMは対象輸入品について独自の算定ルールを持ち、EPDがそのまま代わりになるわけではありません。

参考資料: EPD Australasia · Green Star · Canada · Standard on Embodied Carbon in Construction · European Commission · CBAM

現物と材料記録を結び付ける

溶鋼番号(ヒート番号)やロット番号を手掛かりに、現物の表示、ミルシート、納入記録を照合します。鋼種、化学成分、試験結果、寸法、数量まで確認すると、届いた材料と書類の対応が明確になります。切断や加工の後も識別表示を引き継ぐことで、追跡を続けられます。

01現物の表示

鋼材や梱包の識別番号を読む。

02溶鋼番号・ロット

対応する材料記録を探す。

03ミルシート

鋼種、成分、試験結果を確認する。

04納入記録

寸法と数量を照合する。

参考資料: BS EN 10204:2004 · TÜV NORD · EN 10204

鋼棒を無駄なく使うには

仕上がり寸法から切断長さと加工代を決め、切断の割付や端材の活用を検討します。材料の歩留まりだけでなく、加工に使うエネルギーや部品の寿命も比較に含めます。材料ロスの削減と温室効果ガスの削減量は、分けて確認する項目です。

参考資料: worldsteel · worldsteel · LCA

よくある質問

追跡できる鋼材は低排出の鋼材ですか?

トレーサビリティはロットと記録の対応を示します。排出量の評価は製品に伴う温室効果ガスを算定します。必要な情報が異なります。

参考資料: ISO 14067:2018

ミルシートに排出量は載っていますか?

主な記載事項は材料の識別情報と試験結果です。排出量は炭素フットプリント報告書やEPDの気候変動指標で確認します。

参考資料: BS EN 10204:2004 · EPD Australasia

スクラップが多いほど環境負荷は低くなりますか?

スクラップ比率に加え、製造ルート、エネルギー供給、算定範囲も結果に影響します。

参考資料: IEA · 2024

調達時に材料ロスを減らすには?

完成品の寸法から切断長さと加工代を検討し、切断割付、端材の利用、使用寿命を比較します。

参考資料: worldsteel

JOTAINの材料トレーサビリティ

JOTAINでは溶鋼番号、ロット、材料証明書を用いて、材料の識別情報と試験結果を確認しています。材料記録や納入書類については、品質・書類ガイドをご覧ください。

品質・書類ガイド

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参考資料確認日:2026年9月21日。